日本刺繍で気づいたあれこれ

私の刺繍歴は20年ほどです。

日本人が学べる刺繍はほとんど経験したと思います。していないものもマニュアルがあればできるのでは、という不遜な自信があります。

オートクチュール刺繍が楽しくて、13年お教室に通いました。オートクチュール刺繍の定義は、すべての刺繍のテクニック・材料を使う、と学んだのですっかり分かったつもりでいました。

でも、違うんですね〜。

たまたま見つけた京都の糸屋さんで絹糸を見た時、どう扱って良いのかわかりませんでした。

それでも絹糸の、得も言われぬ上品な美しさに夢中になり、大人買いをしてしまい、これを扱うために日本刺繍を習おう!となった次第です。

そして一年前から沖文先生に教えていただいています。

先生に、『まあ〜、糸が先だったんですね!』と言われてしまいました。゚(゚´Д`゚)゚。

いわゆるフランス刺繍を、多少の差こそあれ絹地に絹糸で施したものが日本刺繍、というイメージでしたが、それはやっぱり違うんですね。

日本刺繍で今までの疑問の解決や、気づきがたくさんありました。

この写真は課題の紫陽花の刺繍です。

先生がお持ちの写真集から、お着物の裾模様だったものをアレンジしていただいて刺しました。まだ花だけで、途中ですが。

爽やかなブルーから白へのグラデーションのお花です。

紫陽花は多花なので、図案が込み入っていて刺しにくいから、と先生が刺しやすくシンプルな図案にしてくださいました。

そして、『図案は刺すことを考えて絵を描いてくださいね。込み入った図案はお花どうしを離しておいてもくっついちゃうし、くっつくならくっつくで重ねちゃった方が刺しやすいです。その場合は上のお花から刺してくださいね。と教えていただきました。

なるほど〜、図案の書き方なんて、今まで教わらなかったな。

上の写真はスムーズに刺したものですが、実は最初刺すのがとっても苦痛でした。細かい図案だからではありません。楽しくないのです。その時の写真が下のものです。

なぜだろう、私は刺繍が大好きなのに……..。

原因は図案でした。

図案を布に写す際、なぜか紫陽花の花びらを四角形にしていたのです!お花に見えないし、ちっとも美しくないですね。

これは全くの思い込みでした。同じお教室の生徒さんがやはりこれとは違う図案の紫陽花を刺していらっしゃるのですが、その方の図案の花びらが四角いものだったのです!

私より先に進んでいらしたその方の作品を見ていたので、頭に「紫陽花の花びらは四角』というイメージがついてしまったんですね。先生が描いてくださった図案の花びらは丸い感じだったのに………。

刺した四角の花びらがヘンテコリンで、嫌になっちゃうんですね。

そこで図案を一から書き直して自然な形に戻しました。

すると、楽しくてサクサク進みました。

やっぱり、土台の図案って大事ですね〜。

そして金糸。今は色金と呼ばれるいろいろな色がついた金糸に夢中です。以前刺した藤にも薄紫色の金糸を使いました。今回は水色のパール加工された糸を使っています。

上の糸を刺した花がこちらです。絹糸に比べ光っていますね。

不思議な立体感が出るので、どうしても使いたくなってしまいます。

そして、案外この糸が主役になることはありません。静かに輝く絹糸の美しさが際立つからです。

こういった金糸は糸の上に紙状の金箔を巻いてあるものです。触りすぎたり、何度も土台布をくぐらせるとすぐぼろぼろになるため、通常より短く切って使います。また、コーチングする際など、ゆるくたわむので、引っ張り気味にします。

今まで他の刺繍でこの辺のことが疑問でしたが、日本刺繍を習うことで解決しました。

まあ、積み重ねた刺繍キャリアが気づかせてくれたのかもしれませんが

そしてそして更に気づいたことが!

なぜ私は刺繍が好きなのか?ということです。

日本刺繍のレッスンは好きな色で刺して良いので、自分の刺したい色で刺します。私はたくさんの色を調和させることが好きです。今回の紫陽花の花は8色使っています。まず刺したい色を一色決めると、あとはそれに合わせて組み合わせます。

そうか!カラーハーモニーに魅せられているんだ!

他の刺繍でも立体感やテクニックの多様さはあるのになぜこんなに日本刺繍に魅力を感じるのか、それは無限と言われる色数と、シックで上品な輝きの絹糸にあったのですね。

ビーズ、スパンコール、リボン、金モール、クリスタル、他にもいろいろいろいろ…………。様々な素材を扱ってきたのに絹糸に惹かれる原因は”色”だったんです。

私にとって刺繍の最大の魅力はカラーハーモニーなのだ、と今更ながら感じたのでした。

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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