袋帯『奏でる』前帯仕上がりました

ずっとずっとブログをお休みしていました。

 

制作に没頭してしまっていました。そして、思うところもありました。

”思うところ”については次回のブログでお知らせしようと思います。

 

まずは制作途中で載せていました袋帯の前帯の刺繍が仕上がったことのお知らせです。

 

この帯の前帯部分は両面仕様のできるリバーシブルです。まずはその一面。

八重桜の小枝です。儚げな花びらの美しさを表現しようとグラデーションを試みました。絹糸は角度によって色が変わるので、縫いきりなどのフラットな手法でも十分美しいのですが、どうしても多色づかいの繊細な表現にしたくて刺し縫いにしてしまいます。

そして、私は私の刺繍を文様にしたくないのです。

日本刺繍は正確で静謐な美しさが持ち味の精巧な刺繍ですが、私はカメラのように、命の輝きを一瞬で閉じ込めるものにしたいのです。

はらはらとこぼれ落ちる花びらのように、見る人の心に何かを届けられるものでありたいのです。

また、そんなものを見にまとうことのできる日本の文化って、なんと豊かなのでしょう!

 

余計なようですが、刺繍のすぐ上にモデルにした八重桜の小枝の写真を載せています。その上の黒っぽいものはもう一面の琵琶のバチの制作途中です。

 

 

そしてもう一面。この白い蝶はお太鼓のオスのジャコウアゲハに琵琶のバチを届けようとしているメスのジャコウアゲハです。こちらも白のグラデーションに私の心を載せるべく苦心しました。繊細で美しいものになったと思います。

実はジャコウアゲハは黒っぽいオスに対して白っぽいメスが存在します。制作にあたって知ったのですが、こんなにも色が違うのは面白いです。

実はお太鼓の琵琶の模様の白い蝶はメスなのです!

この作品は、お太鼓のオスのジャコウアゲハがメスの模様が入っている琵琶をかき鳴らす、前帯のメスがそのためにバチを届ける、と言ったストーリーにしています。

 

 

両面を一度に見るとこんな感じです。

この帯はなかなか地色がうまく写真に撮れず、グレーがかっていますが、実際の帯の色は春霞のような美しい少し抑えめの水色です。

 

制作途中にちょっとした手術で入院したり、色々少し厄介なことが重なったりしてなかなか思うように進めず、一年くらいかかってしまいました。なので喜びもひとしお、なのですが、次回作の帯のデザインでもう頭がいっぱいです。

またまた走り続けるんだなあと、我ながらちょっと呆れています(^^)

日本刺繍作家 Junco Ishihara : 石原順子

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