3D刺繍アーティスト Junco Ishihara |
(財)日本手芸普及協会認定刺しゅう講師 |
静岡県出身・神奈川県大和市在住 |
2017年11月自由が丘STAGE悠にて初個展開催 |
2018コスチュームジュエリーアワード佳作入選 |
2019AJCクリエイターズコンテスト入賞 (東京都美術館展示) |
2020年4月マガジンハウス社雑誌クロワッサン1020号・連載『着物の時間』で紹介される |
2020年10月webmagazine日経ARIA連載『ARIAの手しごと』に掲載される |
https://www.instagram.com/jcaramoca/ |
子供の頃から、手先がとても器用でした。そして美しいものが大好きでした。
七五三の時のワインレッドのビーズのバッグを今も覚えています。それは、なんでも大切にとっておく母のおかげで、洋服だんすの引き出しに綺麗な薄紙に包まれて、ずいぶん長い間しまってありました。
思えばあれが私とビジューバッグの最初の出会いだったのかもしれません。
そして、絵を描くことや、ものづくりが大好きでした。自分が見つけた美しいものが自分の手の中で形になっていくのが、楽しくて仕方ありませんでした。
刺繍に興味を持ったきっかけ
それでも、ものづくりや綺麗なものが好きなことを仕事にしたいとか、仕事になるなど、考えてもみませんでした。
結婚前は短い期間でしたが、コンピューターのインストラクターをしていました。
刺繍に興味を持ったのは結婚後です。夫が、『これから何か学ぶなら、自分が一番やりたいこと、興味を持てることをするのがいいよ。』と言ってくれたのです。
ある日、ふらっと入った洋書屋さんでバーゲンをしていました。美しい写真の洋書には以前からとても興味がありました。偶然手に取った一冊はヨーロッパの刺繍の本でした。
それまで刺繍といえば、中学校の授業でやった簡単な課題しか経験がありませんでした。なので私は、本の中の見たこともない刺繍はどうしたらできるのか、想像もつきませんでした。
刺繍を本格的に学ぶ
そんな時、日本ヴォーグ社で、1年間の刺繍講師養成講座があることを知り、無謀にも未経験なのに、ここなら学べると受講しました。そして…..刺繍の虜になったのです。
ヴォーグではヨーロッパ刺繍全般を5人ほどの先生から学びました。
無事、刺繍講師のお免状もいただきました。
そして、さらにある雑誌で見かけたオートクチュール刺繍に興味を持ったのです。習うことができるのは、私の知る限り当時は2箇所でした。フランスと東京。本気でフランスへ、とも思いましたがたまたま妊娠。子供が幼稚園に入るのを待って、都内のオートクチュール刺繍教室に通いました。そこで13年お世話になりました。
刺繍に関する一番の思い出
2005年、『愛・地球博』でトルコの古都コンヤを象徴する祭礼、(メレヴィー教団のセマの儀式)の映像を見て、その美しさにとても感銘を受けました。
そこでその映像からイメージして立体刺繍のオブジェを作りました。
その直後、儀式がユネスコの無形文化遺産に登録されたのを新聞で知り、トルコ大使館に寄贈を申し出たところ、海を渡ってトルコ、コンヤに作品が展示されることになりました。
こちらの写真はその時の新聞記事と大使館から私への招待状、寄贈作品の写真です。
バッグを手作りしたくなったきっかけ
さらにさらに今度は美しい刺繍を立体にしてみたくなりました。習っていたお教室で、作品をハンドバッグにしてもらうと、まるで生き物のように、俄然輝きが増すことに気づいたのです!これはもう自分で好きな形に縫うしかない!とまたまた無謀にも革のバッグを製図、型紙起こしから縫製まで学べる教室に飛び込み、7年のキャリアを重ねたのです。
その間にコサージュやバッグなど、知り合いの方の求めで2回ほど作ったのですが、喜んでくれるひとのために作る幸せにも気づきました。とてもhappyな経験でした。
2018年より日本刺繍に夢中です
日本刺繍は糸を自分でよって作り出すのが難しく、また楽しく、すっかり上品な輝きの絹糸の虜になっています。無限とも言われる色数の豊かさは、四季がはっきりとした日本の気候風土によるものだなぁと感じます。繊細な自然が繊細な色に感応する国民性を培ったのでしょう。
異質なものとされているオートクチュール刺繍と日本刺繍をクロスオーバーさせて、ジャパニーズオートクチュール刺繍ができないものかと考えています。
2019年、3D刺繍アーティストとして
欧風刺繍に始まり、オートクチュール刺繍、日本刺繍と様々な刺繍を学んできました。いつも思うのは、平面でなく、立体にできないか、刺繍が主役の(もちろんまとう人が一番の主役ですが)洗練された装いや自己表現ができないか、という事でした。その思いから、さらにワイヤーや色々な手法を組み合わせて立体的に表現する私の刺繍を3D刺繍と命名しました。アーティストを名乗るのは、感動したもの、光景などを表現したい、形にしたい、という気持ちからです。
今はアクセサリーでしか作品を仕上げていませんが、オブジェなども作っていきたいです。
2020年マガジンハウス社雑誌クロワッサン1020号連載『着物の時間』にて紹介される
着物好きの刺繍アーティストとして、雑誌クロワッサンの人気連載『着物の時間』にて紹介していただきました。
右写真の自作半襟『枝垂れ桜と揚羽蝶』とやはり自作の蝶の帯留めを付け、色無地を着て、着物にまつわる思い出を語っています。
大好きな着物と日本刺繍が導いてくれました。
さらに努力していきたいと思いを新たにしています。
出会った大切な言葉たち
ヴォーグ社でお世話になった先生から
『あなたは美しい手をしているわね。必ずコンクールに出しなさい。』
日本刺繍の第一人者のお一人、長艸敏明先生のお言葉
『日本では刺繍は文様でしかないけれど、西洋では刺繍そのものが主役になるんやな。』
刺繍を始める前に夫から
『これから何か学ぶなら、自分が一番やりたい事、興味を持てることをするのが良いよ。』
これらの言葉が刺繍とビジュー、革と絹糸の世界へと背中を押してくれました。
なんだかんだで20年ほど、刺繍と革のキャリアを積んできました。続けさせてくれた家族と、教えてくださった先生方に感謝してやみません。
これからどのくらい制作できるのか分かりませんが、私の命が尽きるまで創り続けていこう、と思っています。
3D刺繍アーティスト:Junco Ishihara (石原順子)