ずいぶん久しぶりの投稿になってしまいました。
なかなか収まらないコロナ下、不自由な中で自分に何ができるのかと時々考えます。
なのにこんな状況でも美しいものを渇望して、創作に没頭してしまう自分に呆れもするのですが、世の中に対する私の言葉、私の力は結局刺繍することなのだと思います。私の作品が、どんな時でも人々の心に入り込み、寄り添う歌のようでありたい、と強く願います。
ところで前回はデザインの右上部分の枝(下の写真)を刺していましたが、
徐々に中心部の葉を刺し、
さらに猫ちゃんの頭の上部分の枝を刺し、
さらにさらに猫ちゃんのお顔の左側部分少しと、最初に刺した右側の枝の下部分、トータルで全体の5分の3ほどがやっとやっと刺せました。まだ前帯部分も刺さなければならないのに、お太鼓にこんな時間がかかるなんて!
まあ確かにかなりの大作になると思います。
とは言っても、まだ葉脈も刺してありませんし、一番下の葉2枚はまだ下ごしらえ縫いの段階です。しかも色味に違和感があるので、左の葉の黄色がかった色は濃い緑色に変更します。
こんな感じの色になりました。
うん、収まった(^O^)//♥♥♥
そして、この写真のように、さらに上から絹糸を刺し足します。右の葉も同様にします。右の葉はまだ布目を拾って刺す下ごしらえ縫いの段階ですが、左の葉はその上に切り押さえ、継ぎ針ぼかしというテクニックを加えたものです。
こうすると最初に刺した糸が布から浮くことがなくなります。さらに平面的でカクカクしていた葉が丸みを帯び、色の境目の変化が滑らかになります。
糸の光り方、つやも一定ではなく、複雑に増す感じがして、『日本刺繍すごい!』と思います。女性のたしなみ、教養だった西洋の刺繍と違い、日本刺繍はまさに職人さんのみで継承されてきた”技もの”だと思わずにはいられません。
◊〜◊〜◊〜◊〜◊〜◊〜◊〜◊
葉っぱの表現を悩んでいた時、私の素敵な師匠、沖文先生にご指導いただきました。
『りんごと同じ刺し縫いでも良いけれど、あまり重くなりすぎないようにこちらの技法にしましょう』と教えてくださったのです。
私の日本刺繍のキャリアは今年の4月で3年ほど。まだまだこの刺繍に関しては入り口。
先生にはこの静謐で日本刺繍らしい技法を教えていただいて本当に感謝しています。
でも、かなり時間がかかる技法で、おまけに目をとっても酷使します。。゚(゚´ω`゚)゚。
それでも、どんどん刺し広がってゆく緑の中で猫が本当に可愛らしく見え、猫もりんごの木もキラキラと命の輝きを放っているようで嬉しくなります。
3D刺繍アーティスト : Junco Ishihara (石原順子)